2008.12.27 (Sat)
匠の国 日本
パンドラの箱が開き、様々な災いが世に解き放たれました。しかし、最後に「希望」が残りました。それと同じように、戦後、荒廃の極みにあった日本の国土には、「日本人」が残っていました。それは、匠の伝統を受け継いだ、手先が器用で我慢強く、向上心旺盛な、世界有数の勤勉な国民だったのです。原料を輸入し、加工することによって付加価値を生み出して輸出することが、日本の復興につながりました。
しかし、「こだわりながらものをつくる」という日本の競争力の原点は、徐々に失われつつあります。それは、以下のような理由からです。
国際的な競争力を失わないために、経済産業省は「人財立国」を標榜し、「ものづくり」復権に向けて努力しています。その取り組みについては、経済産業省の事務次官へのインタビューとして、巻末にまとめてありました。個人で出来ることとしては、本物を大事にすること。ヨーロッパのように「本物」を長く大事に使う文化は日本にありません。求められるのは「本物」の品質ではなく、「ブランド品」の名前。「本物」を大事にすることが、職人の活躍の場を広げることになるはずだと書かれています。「職人気質」を今に伝える伝統的な職人の多くは、現在、トキのような状況に陥りつつある。(中略)まず職人世界の最大の問題である後継者難だが、そこには最近の若者の「楽して設けよう」という精神構造と、少子化がダブルパンチで効いてきている。 (中略)我慢強さ、工夫する喜び、向上心といった、職人に必須である資質が、若い世代からは年を追うごとに失われていっている。これもまた、日本社会のあらゆるところで進行している問題である。
この本を読んでいて楽しいのは、『現代の「匠」たち』という章です。日本酒、漆器、和紙、など、12種類の分野の匠が写真とともに紹介されています。ここで思うのは、アメリカなどとのライフスタイルの違い。アメリカでは財をなせばリタイヤして悠々自適の生活を送りますが、日本にはそういう考えはありません。「ものづくり」を人生の一部として楽しもうとする姿があります。修行には終わりがない、ということなのでしょう。
伝統技術によって、一人前になる期間は違う。しかし共通しているのは、「これ以上うまくなれない」という終着点などなく、一生が修行だということである。
以前、「ソフトウェア職人気質」という読みました。いわゆる伝統工芸ではありませんが、我々の仕事も熟練を要する技芸だと思っています私も、「こだわりながらものをつくる」精神は忘れずにやっていきたいです。「ものをつくる喜び」を味わえなければ、自分の仕事に誇りをもったり楽しみや価値を感じることが出来なくなるから。
最後に、前述の事務次官の言葉から。いろいろな取り組みをしている経済産業省の立場から、民間に対してお願いしたいこととして語られました。
不況の真っ只中ですが、企業がコアコンピタンスを忘れず、社員が長期的に安心して仕事に取り組める場を経営者は提供しなくてはならないと思います。それが出来ない会社は、結局淘汰されていくのでしょう。「日本の強さはものづくりである」ということを改めて社長以下、認識していただけるよう願っています。事業を多角化して本業以外のところに進出し、失敗するケースが少なくありません。(中略)長期的な戦略で従業員を抱えることが、ものづくりには大切なことであり、ひいては企業のためになるということです。(中略)確かにイノベーション(技術革新)も重要ですが、それは従業員が安心して働け、長期的なスパンで物事を考えられる環境で生まれるものです。
「楽して儲かる」ことにばかり注目しては、本当の競争力を失ってしまうのではないでしょうか。
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